ニフティ・クラウドとEC2
ニフティ・クラウド
ニフティがIaaS型クラウドサービスを始めた.先行するAmazonのEC2と何が違うのかちょっと調べてみた.
ちなみに,ニフティ・クラウドと富士通クラウドは全くの別物らしい.前者はVMware ESXサーバ, 後者はXen.データセンターの建物は共有しているけど,計算資源も人的資源も全く共有していないらしい.なんかもったいない感じ.
利用者
Amazon EC2 の場合,クレジットカードがあれば誰でも使える.その場で登録して,いきなり使い始める事が可能.
これに対してニフティ・クラウドはニフティの法人会員のみが対象.ニフティ法人会員は当然ながら法人が対象なので個人は使えない,ということになるのか.法人会員のIDを取得するには5営業日かかるらしい.
課金形態
EC2 の特徴の一つは,サーバを停止するとディスク内のデータがきえてしまうことだ.そのかわり一つのイメージからいくつでもインスタンスを作ることができるし,サーバを停止している間は全く課金が発生しない.
これに対してニフティの場合は,ディスクが消えない(!).ということは(おそらく)ひとつのディスクで起動できるインスタンスはひとつだけだろう.また,停止中も課金が発生する(!)しかも結構高い.30GBの場合,一月止めているだけで7560円...ちなみにEC2の固定ディスクEBSは30G月額で3ドルだ.
また,ニフティは時間課金の他に月額課金での提供もする.月額料金は時間課金で使う場合の8割程度に設定されている.
ストレージ周り
この話からEC2とはおそらく全く異なるストレージ周りの実装をしていることが推察できる.EC2はおそらくローカルのストレージを実際に使っている.イメージを各ホストに転送して,VMを起動.起動後は,ストレージアクセスはローカルになり,ネットワークトラフィックは発生しない.インスタンスを停止し,再起動した場合,同じホストに行く保証はないので,停止した時点で破棄したことになる.
ニフティの場合はSANを使ってるのだろう.だからインスタンスを停止しても消えない.逆に高価なSANを使うのでサイズは小さいし,停止している時間も課金せざるを得ない.また,動作中のストレージアクセスはネットワークを介することになる.どういう仕掛けになっているかわからないけど,スケーラビリティは気になるところ.あまりスケールアウトしそうな構造には見えない.
[1/6修正]IT-PROの中田さんからご指摘いただきました.SANでなくてNASだそうです.さらにスケールしなさそうですね...まあ,SANだと価格的にスケールしなくなりそうですが.
利用形態
EC2 はユーザがイメージを作成して,そのイメージから起動することができる.Linuxカーネルのディストリビューションは自由に選ぶことができるし,デフォルトで山のようにイメージが用意されている.
お値段
値段を単純に比較するのは難しい,というか意味がないが,一応.
Niftyの値段は以下の通り.さらに大きなものも導入予定だが,ディスクサイズは一貫して30Gだ.また,ディスクサイズが同じであるにもかかわらず,停止時の課金がプランによって違うのが凄く不思議.一体何が起こってるんだ?
プラン CPU メモリ HDD /時(停止時)/month ------------------------------------------------------ mini 1 x 1GHz 512MB 30GB 12.6 (5.25) 7,875 small 1 x 3GHz 1G 30GB 23.1 (5.25) 13,335 medium 2 x 3GHz 2G 30GB 44.1 (7.35) 25,410 large 4 x 3GHz 4G 30GB 84.0 (10.5) 48,300
EC2のプランもたくさんあるけど代表的なものだけ.
プラン CPU メモリ HDD /時 ------- small 1 x 1GHz 1.7GB 160GB 8.5 cent large 4 x 1GHz 7.5GB 850GB 34 cent ex-large 8 x 1GHz 15GB 1690GB 68 cent
こうして比較すると
- EC2の仮想CPUユニットしょぼい
- ニフティのメモリ,ディスクはしょぼい
- 価格はEC2が割安?
といった感じか?
所感
いろいろ見ていると,ニフティ・クラウドとEC2は,全く目指している点が違うと言うことがわかる.ニフティクラウドは,言っちゃ何だが,要するにただの仮想ホスティングサービスで,既存システムをそのまま移行することしか考えていない.実際ほとんどのユーザが,月額課金で起動しっぱなしで使うことになるのだろう.
これに対して,EC2はこれまでと全く違う計算機の使い方を提案しているように見えるし,実際そのような市場を創出している.
じゃあ,ニフティ・クラウドはダメなのか?というとそんなことはなくて,おそらく日本の企業ユーザにはこちらのほうが受けがいいのだろうし,それを研究した上でのこの運用なんだろう.もっとも,それこちらのほうが受けがいいこと自体がダメな感じだが :-(.